千葉県南部には、シカに似ているけれども違う動物が大量発生しています。その名はキョンです。キョンは、中国や台湾から持ち込まれたシカ科の動物で、観光施設から逃げ出して野生化しました。
キョンは、高い繁殖力と広い食性を持ち、農作物や自然植生に被害を与えています。また、おっさんのような鳴き声も住民を悩ませています。さらに、キョンの肉は、台湾では高級食材として珍重されているのです。
この記事では、キョンの特徴や生態に関する情報、千葉で急増している理由、特徴的な鳴き声をはじめ、キョンの肉は食べられるのか等について、わかりやすくお伝えします。
キョンとはどんな動物か?中国や台湾からやってきた四つ目の鹿
キョンの特徴
キョンは、シカ科ホエジカ属に属する小型の哺乳類です。学名はMuntiacus reevesiといいます。別名は羌(きょう)やホエジカとも呼ばれます。台湾や中国南部に分布しています。
キョンの生態
キョンは一年中繁殖することができ、妊娠期間は約7ヶ月です。一度に1頭の子どもを産みますが、産後すぐに再び妊娠することができるため、繁殖力が非常に高いと言われています。
キョンは草や木の実、芽や葉などを食べる雑食性で、農作物や自然植生に被害を与えることがあります。キョンは夜行性で、昼間は茂みや林の中に隠れています。
キョンは縄張り意識が強く、オスは自分の縄張りを主張するために、木に角や犬歯で傷をつけたり、尿や糞でマーキングをしたりします。
キョンの分布や生息地
キョンは、千葉県南部の山間地や平地に野生化して広がりました。かつて千葉県勝浦市にあった民間の観光施設「行川アイランド」で飼育されていた個体が逃げ出したのがはじまりと言われています。
現在では房総半島南部の17市町に広がっており、生息圏はさらに北上しています。
平成14年には約1,000頭だったものが平成28年までに50倍の約5万頭に増加したと言われ、県が防除をすすめているものの、現在では7万頭を超えるまでになってきています。
また昨年12月には、茨木県(石岡市)の山間部ではじめてオスの生息が確認され、千葉県南部から持ち込まれた可能性も指摘されています。
キョンの外観
キョンは一般的な鹿と比べると、体長は約80cm、体重が約10kgと中型の犬ほどの大きさで、肩までの高さは40cm程度の小柄で華奢な体型をしています。
背中は赤褐色、腹部は白色の毛で覆われています。オスには約5cmの角があり、メスにはないのが特徴です。また、オスには上顎の犬歯が長く伸びており、これを使って争うこともあります。
キョンは、シカに似ていますが、角が小さく、犬歯が長く、目の下に黒い斑点があるのが特徴です。
キョンは四つ目の鹿とも呼ばれますが、これは目の下の臭腺が目に見えることから来ています。
キョンの鳴き声
キョンの鳴き声は、見た目に反して、おっさんのような低い声で昼夜を問わず「ボォー」と鳴きます。
この鳴き声は、オスがメスを呼んだり、縄張りを主張したりするときに発するもので、聞くと不気味な感じがします。
キョンの鳴き声は、住民の睡眠を妨げたり、ペットや家畜を驚かせたりすることがあります。
キョンが千葉でなぜ急増?四つ目の鹿が減らない理由
キョンの増加の原因や背景
キョンの増加は、千葉県の森林や平地林での繁殖によるものです。彼らは年率で36%もの繁殖力を持ち、爆発的に増加しています。
また、キョンは外来種であり、特定外来生物として指定されていますが、鳥獣保護法ではキョンは狩猟鳥獣に指定されていないため、勝手に駆除できません。
日本ではキョンの天敵となる大型の肉食動物がほとんど居ない状況です。オオカミは絶滅し、クマの頭数はキョンの増加に見合っていないことが大きな原因です。
千葉県が計画的に防除をすすめているけど、爆発的な増加が上回っているみたい
第二次千葉県キョン防除実施計画(PDF)
キョンの罠はネコがいる住宅地には仕掛けられないそうよ。なかなか防除が進まないみたいね。
キョンの増加が及ぼす影響
本来、人を警戒し森やヤブを好むキョンですが、千葉県では人々の生活圏にまでお構いなしに出没しています。また雑食化しており、農作物被害のみならず、民家の庭に侵入して草木や花も食べ漁っています。自然植生の食害も懸念されています。
お米や野菜だけじゃなくて、花でもなんでも食べ荒らしちゃうのヒドイよ!
オオカミの尿と同じ成分でつくられた忌避剤で寄せ付けにくくはできるみたい。でも匂いがすごく臭いんだって・・・
キョンによる被害と対策方法
キョンによる農作被害
キョンは草や木の実、芽や葉などを食べるため、農作物や自然植生に被害を与えます。
特に、キョンはミカンやイチゴなどの果物が好きで、これらの作物を栽培する農家にとっては大きな損害です。
キョンによる農作物の被害額は、千葉県では年間約2億円にも上ると言われています。
キョンによる交通被害
キョンは夜行性で、道路を横断することがあります。キョンは小柄で、車のヘッドライトに反射しないため、運転手に気づかれにくく、交通事故の原因になることがあります。
キョンによる交通事故は、人や車にも危険を及ぼすだけでなく、キョン自身も死傷することがあります。キョンによる交通事故の件数は、千葉県では年間約200件にも上ると言われています。
キョン被害の防止
キョンの被害を防ぐためには、駆除や対策が必要です。キョンの駆除は、千葉県や市町村、農業団体などが行っています。
キョンの駆除には、罠や銃などの方法がありますが、これらには許可や条件が必要です。また、キョンの駆除には、動物愛護や自然保護の観点から反対する意見もあります。
キョンの駆除は、個体数の抑制や被害の軽減には効果があると言われていますが、根本的な解決にはならないとも言われています。
キョン被害の対策
キョンの対策には、農作物や自然植生の保護や、交通事故の防止などがあります。
農作物や自然植生の保護には、柵やネットなどの物理的な障害物や、キョンが嫌う臭いや音などの忌避剤を使う方法があります。
しかし、これらの方法には、コストや労力がかかるという問題があります。また、キョンは賢くて慣れやすい動物なので、効果が薄れることもあります。
交通事故の防止には、道路にキョンの注意を促す看板やライトを設置する方法や、運転手に速度を落とすように呼びかける方法があります。
しかし、これらの方法には、運転手の協力が必要であるという問題があります。
キョンの肉は食べられるか?
キョンの肉は台湾では高級品
赤身が多くクセもなくて柔らかいため、美味な肉として一部で知られています。キョンの生息地である台湾では高級品として扱われています。
日本では千葉県南部で外来種として増えてしまっており、食肉として扱われていないため、キョンの肉は一般には馴染みがありません。
キョンの肉を流通させないのはなぜ?
お金儲けのための飼育や繁殖は、害獣を駆除することと逆行し、誤ったメッセージと取られることにつながりかねないため、県は食肉として活用することは慎重な立場をとっています。
とはいえ、県に許可された一部のハンターが、防除したキョンの肉を販売されています。
現状では、利益がほとんど得られないものの、防除が完了するまでの限られた状況下で、命を大切に扱い協力する観点から取り組みを続けられているとのことです。
害獣であることから、観光や名物に利用するようなことはしない、ということだね
だから「房総ジビエ」のブランドには、キョンは含まれないんだって。
まとめ
千葉県で爆発的に増え続けているキョンは、特定外来生物として県の内外から注目されています。その増加の背景や影響、まつわる問題等についてお伝えしました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。